石川県金沢市の東山ひがし地区は、重要伝統的建造物群保存地区で、ひがし茶屋街の名称で知られる。南北約130m、東西約180m、約1.8haで、保存地区内の建築物140のうち約3分の2が伝統的建造物である。茶屋町創設時から明治初期に建築された茶屋様式の町家が多く残る。創設時の敷地割をよく残し、全国でも希少な茶屋様式の町屋を多く残しているとして、2001年11月14日、種別「茶屋町」で、国の重要伝統的建造物群保存地区として選定された。
天正8年(1580年)、佐久間盛政が金沢御坊を攻略し金沢城を築城したのち、前田利家が入城し、金沢城下は城下町として栄えることとなる。加賀藩では領民にも謡を奨励し、多くの領民が謡を習い、その裾野は大きく広がり、「空から謡(うたい)が降ってくる」と言われるほどの町になったが、そんな風情が一番残っている町である。
江戸時代、城下町近郊を流れる犀川・浅野川両界隈に多くの茶屋が立ち並び、犀川西側に「にし」の茶屋町、浅野川東側に「ひがし」の茶屋町が共に開かれた。この際、旧来の不整形な町割は改められ、整形な街区が形成され、浅野川をはさんで北西に茶屋街の一つである主計町がある。二番丁にある茶屋「志摩」は、歴史的価値が高いことから2003年12月25日に国の重要文化財に指定され、一般公開されている。
金沢生まれの作家、井上雪の小説『廓のおんな』は、この町が舞台(旧「愛宕町』)で、伝統的な金沢弁で描写されている。