ボスポラス海峡のヨーロッパ側に建つこの壮麗な高級ホテルは、ボスポラスで唯一の宮殿ホテルで、格式高いホテルの上品さと壮麗な建築が見事に融合している。多くの皇族や各国首脳が今なお宿泊する。円天井、アンティークや織物などが飾られたパレススイートからは、格式高い趣が感じられ、オスマン帝国期の豪華な暮らしぶりが見て取れる。客室からはボスポラス海峡、スルタンの狩猟場だったイゥルドゥィズ公園が眺められる。ホテル内の「トゥーラ」ではイスタンブールで最高とされるトルコ伝統料理が賞味できる。ロマンチックなお食事には、テラスが良い。
チュラーン宮殿（Çırağan Sarayı, Çırağan Palace）は、19世紀に建設されたオスマン帝国の宮殿で、イスタンブールのベシクタシュ地区の海沿いにありドルマバフチェ宮殿の北方、ユルドゥズ宮殿と近接した位置にある。ボスポラス海峡に面した風光明媚な土地で、18世紀のアフメト3世が邸宅を築き、娘婿で大宰相のイブラヒム・パシャが居住していた。1834年にはマフムト2世がそれまでの邸宅を取り壊し、自分用の宮殿を建設した。その宮殿も1857年にアブデュルメジト1世によって廃され、新たな宮殿が建設されかけたが、これはアブデュルメジト1世の死によって工事が中止された。
現在のチュラーン宮殿はアブデュルアズィズの命により建設されたものである。アルメニア人建築家ニコオス・バルヤンとその子サルキス・バルヤン、ハコプ・バルヤン（バルヤン家）の設計で、1863年から1867年頃に着工し、1872年に完成した。
外装は大理石で、内装は壁から天井まで木が使用されていた。宮殿庭園の外周は高い壁で囲まれ、すぐ後背の丘陵にあるユルドゥズ宮殿とは連絡橋で繋がっていた。
なお、この時代のオスマン帝国のスルタンは、個人の私邸を建設する習慣があり、チュラーン宮殿はその例に則って建設された最後の皇帝私邸である。
1909年11月からチュラーン宮殿は議事堂として転用されたが、その直後の1910年1月19日、屋根裏から出火し、外壁だけを残して焼け落ち多くの貴重な美術品や書物が失われた。1930年には旧庭園用地にサッカーの競技場が整備され、ベシクタシュJKのホームグラウンドとなったが、宮殿部分は修復されずにそのまま廃墟として放置された。1946年には政府の所有からも外れた。1987年、日本の熊谷組が買い取り、大規模な修復が開始され、工事は1989年に完成した。この修復工事では、ホテルとしての機能が追加され、1990年からはドイツのケンピンスキーが、同国の最高評価である5つ星の格付けを持つ高級ホテルとして運営している。