スコットランドには、めずらしい形状をした直線状の渓谷が通っている、なぜこのような渓谷が生まれたのか、そこには地球の「大イベント」の形跡がある。
地図を見ると、一方の海岸から他方の海岸にかけて、ほぼ一直線の渓谷が通っていることに気が付く。スコットランドは起伏に富んだ地形だが、不思議なことにこの渓谷は直線で、過去に、何かしらの興味深い地質学的イベントが発生した痕跡か、しかも、それは一回限りではなかったようだ。
5億2千万年前、地球上の陸塊は、その大部分がローレンシア大陸とゴンドワナ大陸の2大陸に分かれた。この時、現在のグレートブリテン島にあたる部分が分裂し、スコットランド北部がローレンシア大陸に、残り半分の南部がゴンドワナ大陸の一部となる。
4億3万年前のカレドニア造山運動期にこの2大陸が衝突し、この衝突によって2つの部分がくっついて、現在のグレートブリテン島の元となった。
その過程で地殻にしわや歪みが生じ、地球上のあらゆる場所で新たに山や断層が作られた。こうして新たにできた断層の1つが、「横ずれ断層」であるスコットランドのグレート・グレン断層だ。
横ずれ断層は、2つの構造プレートがずれたり、水平方向にすれ違って生じたもので、断層運動は、他にも片方の断層が垂直方向に動くもの(縦ずれ断層)があり、断層上に山脈などの隆起した地形を形成する。
造山運動で2つのプレートが衝突し、グレートグレン断層の両岩盤は水平に移動した。
断層の形成過程において、このような運動は何回か繰り返されました。グレートグレン断層は幾度か活動し、ローレンシアとゴンドワナの両大陸は、そのたびに8キロから29キロメートル程度動いた。断層は、蓄積された歪みのストレスを、時折このような形で放出する。
2つのプレートが衝突し合って圧力が加わると、歪みのストレスが生じ、それが限界に達するとプレートはずれて互いに逆方向へ動き、蓄積されたストレスを放出する。
最大の活動が起きたのは6,600万年くらい前と比較的最近で、付近の別の地殻プレートが引き裂かれる運動により引き起こされたものと考えられる。
現在のグレートグレン断層は、「ロッホ」と呼ばれる湖が点々と連なりるが、これは、イギリスとアイルランドの諸島の大部分が、過去何万年かの間にたびたび起こった氷河期に巨大な氷床に覆われていたため。
また、グレートグレン断層付近の氷河は約1万年前に後退をはじめ、断層線上に海水面位より深い渓谷を刻み込みこみ、そのため、スコットランドを貫く直線がより目につきやすくなった。
この直線状の断層は、5000万年もの歳月と地殻変動の産物で、今日の私たちが目にする地球を形作った大スケールのイベントの証拠とされる。