アレクサンドル・カバネル (Alexander Cabanel)

フランスの新古典主義・アカデミー画家、歴史画家、肖像画家であるアレクサンドル・カバネル (Alexander Cabanel、1823年9月28日 – 1889年1月23日)は、正確なデッサンで甘美で官能性に溢れた神話的女性像を手がけ名声を博す。

新ロココ様式とも呼べる画風の『ヴィーナスの誕生』は、時の皇帝ナポレオン3世が購入するほどの高評価を得た。

カバネルは典型的なアカデミー的作風で成功したため、同時代の印象派の画家らから敵対視され、印象派の陰となり評価が不当に低くなっていた。

そのため現在も研究が進んでおらず、多くの代表作が行方不明となっている。

1823年パリに生まれ、1840年から五年間パリ国立美術学校でアカデミックな絵画を学ぶ。

1841年、サロン初出展、1845年にはローマ賞し、イタリアへ留学。

1863年、アカデミー会員選出など、順調に地位を確立し、フランス支庁舎の装飾など公的な注文を受けるなど、数々の名誉を得た。

1889年、生地であるパリで死去。

代表作

モーゼの死(1851年)ニューヨーク、ダヘッシュ美術館

ニンフとサチュロス(1860年)私蔵

ヴィーナスの誕生(1863年)パリ、オルセー美術館

フランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの死(1870年)パリ、オルセー美術館

Keller伯爵夫人(1873年)パリ、オルセー美術館

フェードル(1880年)モンペリエ、ファーブル美術館

オフィーリア(1883年)私蔵

カーゾン・オヴ・ケドルストン侯爵夫人(1887年)イギリス、ケドルストン・ホール

有罪の囚人で毒を試すクレオパトラ(1887年)私蔵

Eve After the Fal 私蔵

アダムとイヴの楽園追放 私蔵

アール・ポンピエ(L’art pompier)は、 Pompéin(ポンペイ)、pompeux(もったいぶった)の洒落とも言われている。

19世紀後期、フランスの格式ばったアカデミック絵画、とくに歴史画、寓意画を指す言葉で、侮蔑的に使われた。

直訳すると、「消防士の美術」で、当時のフランスの消防士がかぶっていた、馬の尻尾の毛のついた風変わりなヘルメットに由来する。

このジャンルの作品の中に出てくる、寓意的な化身、古代ギリシア・ローマの戦士、ナポレオンの騎兵のかぶっていたギリシア式のヘルメットによく似ていたことによる。

ポンピエ美術は、ブルジョワジーの嗜好を具現化したもの、偽りのもの、誇張と見られていた。しかし、このジャンルの絵を支持する人は、この言葉を忌み嫌った。

パリのオルセー美術館では、アール・ポンピエが、当時の印象派、写実主義と同等に展示され、アール・ポンピエは再評価を受けている。